未来人のつくったハンバーガーは美味だがコーヒーは微妙。ただし希望に満ちている。

コインランドリーとレトロ自動販売機の話。コーヒー付き

◯ほんじつのもくじ
  一、 コインランドリーとノスタルジー
  二、 コインランドリーとレトロ自販機
  三、 相模原市のレトロ自販機コーナー


一、 コインランドリーとノスタルジー

どうやら最近、新しいビジネスとして布団を専門にしたコインランドリーが、注目を集めているらしい。
しかし個人的には、まちのエアポケット的空間にあるあのさびれた姿こそ
現代におけるコインランドリーの本懐だと思うのです。

どうにも最新のマシンは、煩雑すぎるほどの多機能さで我々人類をほんろうしてきます。
さながら、なまり玉と硝煙のないターミネーターの世界です。
きっと多くの消費者は、ほとんどの機能を使わずに買いかえていることでしょう。

ゆえに「洗う・干す」というわかりやすい仕事で構成されたあの空間は、
ワタクシいさぎよさを一周して美しさすら感じます。

旭湯に併設するコインランドリー

と、まぁ一見、機能主義を体現したコインランドリーですが
そのじつ人とのゆるやかなつながりも見てとれるのも魅力。

たとえば手製の注意書き、古びた週刊誌にボードゲーム。
きっと誰かが忘れたのか、わざと置いていったのか。
どちらにせよこれらの遺物をみなさん占有することなくお行儀よく使います。
なぜか持ち帰るでもなく、洗濯かごに置くでもなくちゃんと棚にもどすのです。
それも他に読みたそうな人がいればできるだけ早くに。

この思いやりと緊張感(店内はせまく盗難のおそれもある)がいり混じった空間を
ぼくは「サムライスペース」と呼んでいます。絶対流行らない

どうでしょう?
今まで無機質だと思っていたコインランドリーに
少しばかり愛らしさやノスタルジーを感じてきませんか?

郷愁(ノスタルジー)とはモノそのものではなく、人間の営みの残滓に起因する感情なのかもしれません。


二、 コインランドリーとレトロ自販機

コインランドリーはノスタルジーを想起させる。
この情景をうまく表現したマンガに、石黒正数先生の『それでも町は廻っている』があります。

※※あらすじ※※
 商店街を舞台にした女子高生の日常コメディーが中心。

 超常現象やミステリー、ホラー要素も盛りこまれたS(すこし)F(ふしぎ)な名作。

82話扉絵。藤子・F・不二雄味のある世界観

アニメ版『それ町』でよく話題に上がる回が
雨宿りのためコインランドリーにかけこみ、レトロ自販機と出会うお話(たしか8話?)

ちなみにレトロ自販機とは、今で言うところのホットスナックの自動販売機にあたります。
70年代、ドライブインを中心に隆盛をきわめたものの
コンビニやファーストフードの全国展開によってその数は減少していきました。

うどんのレトロ自販機。全力全自動であたたかい食事を提供してくれる

つねに流行を作り追い求める女子高生が、
古びたコインランドリーで、すたれた自販機のあたたかいご飯に舌鼓を打つ。
そんなアンバランスがどこかぼくらの機微にふれます。

最近、似たような感覚をおぼえた作品は『少女終末旅行』
「終末」という退廃した世界で、未来の象徴である「少女」が生き抜く物語です。
まさしくアンバランスですね。

つまるところ郷愁(ノスタルジー)とは、前述の「人の営み」だけでなく
過去への切望や美化もついてまわる感情なのかもしれません。
“愁い(うれい)”というぐらいですから懐かしさ以上の感情を持ち合わせているのでしょう。


三、 相模原市のレトロ自販機コーナー
「たまご街道」の帰り、なんとなく地図をながめていたら面白そうなものを発見しました。

相模原になつかし自販機の聖地があるとは聞いていたのですが、
まさかすぐそばだったとは。

郊外感あふれる道をぬけて

おお!
うおおおおおお!!

もう、これ飲食街ですよ。人いなかったら通路全力猛ダッシュしていましたね。

この自販機群は、おとなりの「中古タイヤ市場」社長・斎藤さんが長年かけて集めたコレクション。
機械いじりが好きらしく、足りない部品は自作して修理したのだとか。
トースト(300円)。味はハムチーズとコンビーフの2種。

たっぷりの具。
コンビーフ、ブラックペッパー、マーガリンと間違いのない組み合わせです。
ちなみに純正アルミは特注(さすが社長!)
見て下さい。このハンバーガーおじさんの顔。

顔!!
なんという無垢な瞳。おそらく肉をキメまくったのでしょう。
そもそもミスターバーガーとか誰でしょう?肉の精?
なんにせよおいしいお肉を焼いてくれそうです。
ボタンの字が小さくて分かりづらいですがハンバーガー、チーズバーガー、テリヤキの3種あります。
値段はすべて同じ(さすが社長)

ニキシー管!!
これはミキティーばりに叫びたくなります(ニキシィィー!)

レトロポップな箱はもちろん特注品(さす社)
広告でしかお目にかかれなさそうな分厚いバンズは、ふっくらと香ばしい。
食肉の他ってのはおそらく卵とかのことでしょうか。馬肉と勘違いしました。
珍しいタイプのコーラ自販機。ハンバーガーと合わせて資本主義セットができます。
↑↑↑共産主義者はこちら🏁

チャーシュー麺。400円と安い。チャーシューの下にほかの具がある。

AIによって仕事が自動化される昨今、レトロ自販機はむしろ未来を思わせます。
あるいは本当に未来人が、タイムトラベルのプロトタイプとして
送り込んできた可能性も捨てきれません。
なるほど、レトロ自販機はロストテクノロジーではなくオーバーテクノロジーだったわけですね。
オーパーツなら修理できないのにも納得です。
のんきな空想がひろがるほどに牧歌的な風景。
もうしわけ程度のコーヒー屋のブログ要素。
見た目はカプチーノ、味はブラック。
香料のきいたケミカルな味わいです。
おそらく未来人はコーヒーにあまり興味がないのでしょう。

『それ町』にもでてきたうどんの自販機。たまご街道で生卵買ってくればよかったです。
このボリュームで350円
かつ丼を作った理由は社長曰く「うどん、そばと定食セットを作れるから」。こだわりがすごい。
おそらく人類史上最速でカレーを食べられるマシン。しかも大盛。
通常、あたためる時間が必要なレトロ自販機だが、これはすぐに保温状態のものが出てくる。
ボンカレーの宣伝文句って「3分温めるだけですぐ食べられる」だったはずなんですけどね。
顔!!
彼もカレーをキメた目をしていますね。
ちゃりーん、「ガタッ!“ボン!食え~!”俺ぁどんどんカレーお見舞いしていくぜっ!」

もちろんブログに上げた写真は一日で食べきったわけではありません。三回分ぐらいでしょうか。
とくに休日の昼間は老若男女で大にぎわいでしたね。
家族連れ、カップル、近所の子ども、走り屋のお兄ちゃん、なつかし自販機マニア……

写真を撮りたい人、次の注文をしたい人
通常、人であふれかえるはずの細長い通路で各々が各々を気遣っています。
そう、ここにも「サムライスペース」があったのです。

さらにラッキーなことに補充現場に出くわしました。中まで丁寧にリペアされています。
大人が本気で趣味にのめり込むとスゴイ熱量だ。

先ほど、コンビニの台頭によりレトロ自販機が減ったお話しをしました。
生活は便利になったものの、理想の未来とは言えなかったようです。
それは世界情勢の不安を背景に同時期、レトロフューチャーなるものが流行したことからもわかります。

レトロフューチャーとは、かつての人々が思い描いていた未来像を楽しむ懐古主義のこと。
「ああ、あのころは未来への希望と信頼にあふれていたなあ」と当時の人は思っていたわけです。
あいもかわらず不景気に苦しむ令和2年、ぼくもやれ未来人、時間遡行、オーパーツなどと
つい非現実的な妄想をしてしまいました。

しかし、そう悲観せずとも未来は明るいのかもしれません。
それを教えてくれたのは
  思いやりにあふれた人々のサムライ精神
  社長のモノづくりに対する情熱と愛

そしてエッジのきいた香料をかますコーヒーでした。
とにかくコイツは現実に引き戻してくれます。過去を美化して郷愁にひたるんじゃあないと。


p.s.
緊急事態宣言の解除されたので、今回は自分のまちを紹介してみました。
近くのたまご街道でスイーツ買って麻溝公園で食べて、ふれあい動物園でウシやヤギとたわむれ、植物園で南国を感じ、帰りは旭湯で風呂につかれば
もう充実した休日まちがいなしですね。
というわけで相模原市さん、早く僕を観光親善大使にしてください。

p.s. 次回予告(予定は未定、個人メモ)
・コーヒーのむらしについて
・ロワイヤルスプーン買って気分はロイヤル
 

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