立川伊勢丹の抽出レシピ

『針は意外と深く刺さる』

GWはいかがお過ごしでしたか?小島は立川伊勢丹の催事を終えた後、千葉の祖母の家に行きました。
出発2分前に特急へ慌てて乗り込んだり
切り離し運転で途中置いていかれそうになったり
着いたらついたで換気扇からリビングに大量のハチが侵入してきたり
ちびっ子に買ったばかりのJOURNAL STANDARDのシャツを染色されたり
テーブルの下にいた蜂を素足で踏んづけて針がざっくり刺さったり

おちこんだりもしたけれど、私はげんきです(魔女宅風)
 
さて、前回は確か大粒品種と大容量の抽出について書きました。
そもそも普段抽出なんてあまり気にしないよ、という方もいるかもしれないので
今回は抽出の基本ルールをおさらいしつつ立川の抽出レシピを記載しようと思います。
そんなのもう知ってるぜ!という場合はレシピまでスクロールしてください。

 <苦味・酸味と抽出の関係性 ~基本編~>  ざっくりと。


 酸味・薄い苦み・濃い
焙煎度浅煎り深煎り
湯温低い高い
粒度粗い細かい
浸漬時間短い長い
粉量少ない多い


まず同じ豆からコーヒーを抽出するにあたり、上記の要素で大きく味は変化します。
味づくりの要である焙煎に沿って抽出も行うべきなので
浅煎りはスッキリとした酸味を、深煎りは濃い苦味を前面に出した液体が理想です。
簡潔に言えば焙煎度合が深くなればなるほど濃度は高くなるように心がけます。
ただし、深煎りのコーヒーを右の列だけ意識して抽出するとトンデモなく濃く
そしてエグ味・雑味のある液体が完成するので要注意です。もちろん浅煎りを左列だけで抽出するのもいけませんね。

<成分はどのように移動するか ~発展編~> 表だけでまとめられない部分を箇条書きで簡単に。
湯温が高いほど引っ張り出せる成分は増加する
・粒度が細かくなればなるほど移動する成分は増加する(表面積が大きくなるため)。
・浸漬時間が長くなればなるほど移動する成分は増加する。
・酸味成分は短時間で移動する。故に湯温や浸漬時間の影響をあまり受けない。
・苦味成分は移動の速いものと遅いものがある。遅いものほど渋み雑味などのネガティブな味わいがある。
※例えばエスプレッソは細かい粉を高温で抽出するが短時間で行う、浸漬時間の長いフレンチプレスは粗挽きを使う。このように基本ルールの中でバランスをとった抽出法を選択すべきである。

<立川のレシピ ~事前に作ったver~>
以下に載せたレシピは「注ぎきり」。重量は抽出した液体ではなく注いだ湯量。最後の4投目を注いだ後、最後までコーヒーを落とし切ります。
よく最後まで落とし切らずに抽出を終えた方がよいと聞きますが、スペシャルティコーヒーのクオリティならそこまで気にしなくても大丈夫です。

ハリオの円錐型ドリッパーV60を使用したハンドドリップ
湯温/90℃  粒度/ナイスカットミル 目盛4番
4番の粗さ

〇200ccレシピ
浅煎り/18g 中煎り/17g 深煎り/18g
1投目 30~40cc(むらし。注ぎ始めから2投目までの待ち時間は40秒。10秒前後で30~40を淹れるイメージ)
2投目 60~70 → 100
3投目 70    → 170
4投目 70    → 240(最後まで落とし切ったら約200出来上がります)

〇250ccレシピ
浅煎り/21g 中煎り/20g 深煎り/21g
1投目 40
2投目 80 → 120
3投目 90 → 210
4投目 90 → 300
※2~4投の各作業は200レシピの場合12~14秒、250レシピの場合14~16秒で淹れることが望ましい。いっぺんに2種類淹れることを前提に作成したレシピのため、これを守ればそれぞれのカップの抽出ムラを軽減出来る。
※コーヒーサーバーは温めること。冷めてもおいしいが多くの人は温かいコーヒーを求めている。
※少量の味見でもインパクトを与えたいので、浅煎りの濃度は通常よりやや濃い。中煎りと同じぐらい。
銘柄によるが浅煎りは炭酸ガスの放出量が少ないからだろうか?ペーパー内で目詰まりしやすい
→ドリッパー内の湯量が増え、薄い味わいになる。慣れれば少量の粉でも対応できるが2種同時抽出前提であると厳しい
→中煎りより粉量を増やし濃度の安定性を図る

ハンドドリップにも注ぐ湯で粉を撹拌する、1投で最後まで淹れるなど様々な方法がありますが
他のスタッフとレシピを共有するために気を付けたのは豆の量と抽出時間ぐらいです。

<立川のレシピ ~現地で作ったver~>
催事はいつも使用している器具と異なる場合が多いので、事前に100点近いレシピを作っておくと対応しやすいです。
立川では水道水を使ったのですが、これが中々フレーバーを引っ張り出しづらい。
水道水を使用する際は、よく沸騰させるといいですね。うなぎ屋のタレのごとくガンガン継ぎ足して沸騰させて即抽出です。
しかしながら、継ぎ足した湯を長時間沸騰させ続けるとミネラル分が結晶化し(カルシウムやマグネシウム、ケイ酸など。人体に影響はない)、途端にフレーバーが出にくくなります。

まとめると水道水でおいしいコーヒーを淹れるには
・通常よりも若干細かい粉
・粉量を増やす
・継ぎ足しながらよく沸騰させる。ただし、満水にしたケトルを2~4回使用したら水をすべて入れ替える(催事での作業効率を考えるとここがつらい)
の以上3点が大事です。

抽出の仕方で味の印象はがらりと変わります。ちなみに豆の量は200レシピは浅中煎り20g深煎り21g、250レシピは浅中煎り23g深煎り24gです。立川の味を思い出したい方は試してみてくださいな。

(おまけ)アイスオレ

次回、新宿伊勢丹の催事では喫茶とテイクアウトを行う予定。
グラスの形状は不明ですが、アイスオレは2層にして出すようなのでその練習です。
やり方は色々あるみたいなのですが、氷→牛乳をはねないように優しく注ぐ→氷→氷の上にゆっくりとコーヒーを注いで作りました。これなら簡単に白黒のコントラストができますね。まあ向こうに置いてある氷の形状と要相談です。
ストローでかき混ぜると揺らめく木星のようにそして段々と土星色へ変化します。映画『ガタカ』で宇宙飛行士を夢見る青年ヴィンセントが、タバコの煙をワイングラスにゆっくり吹き付けてタイタンはこんな星だと説明する場面を思い出しますね。

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