微粉とコーヒーの関係性

『前回の続きです』

前回の記事「微粉の少ないコーヒーミル選手権」では、コーヒーミルごとの微粉の量を計測しました。
今日はその続きとして微粉有り無しのコーヒーを飲み比べてみようと思います。
今回も微粉を取り除くのにコントロールストッカー君に協力してもらいました。

~実験概要~
目的:微粉に関する理解を深めよう
選手:グアテマラ ロズマ農園 パルティーダ4 来月のオススメセットです
ロースト:中煎り。カフェテナンゴでいう3〜4番、パルティーダ1よりはやや深め。
焙煎日:3月2日(土)
実験実施日:3月9日(土)だいたい焙煎から1週間といったところ
コントロールストッカー:前回と同じく1番網目の大きいフルーティーメッシュを使用

以下の4つを飲み比べる
①そのまま。何も足さない何も引かない。
ナイスカットG目盛4番(前回の実験と同じ)、粉13g、抽出量160cc、抽出温度90℃

②①からコントロールストッカーで微粉を取り除いたもの。
コントロールストッカーの商品ページと同じように20gをセットし30秒間振る。すると微粉が除去された粉16gが残るのでそこから14.5g使用。①よりも表面積が小さくなるため粉の量を1.5g増やすことで液体の濃度を調整した。抽出量、抽出温度は①と同じ。
※私はなかなかに意地が悪いので商品ページに書かれている内容を検証してみました。結果20.1gをセットした場合15.8gの粉ができた、すみませんでした。

だいたいこの手の実験は上記2つの飲み比べだけなので、他にも用意してみましょう。
③微粉を少量取り除いたもの
今度はコントロールストッカーの茶こしだけ使用。先ほどと同じように20g用意し、茶こしを横方向に20秒間ゆっくりゆするようにして微粉を少量取り除く。②はシェイクしまくって微粉を除去したので、今度はあまり空気に触れさせないイメージ。粉の量、抽出量、抽出温度は①と同じ。

④微粉
今回の実験でたくさん作り出してしまったので飲む
極細挽きを短時間で抽出するエスプレッソのイメージでハンドドリップしました。

~結果~
①そのまま 抽出時間2分12秒
おいしいですね。香り良し、後味の余韻が長い。口に含んだ時に凝縮された酸味を感じる。
アプリコットやレッドアップルを思わせるあたたかなイメージの酸味。ナッツ系の甘みだろうか以前試したペアリングでは、アーモンドやヘーゼルナッツ、カスタードクリーム等を使用したケーキとの相性がいいと感じた。

②微粉を完全に除去したもの 抽出時間2分8秒

焙煎から1週間経過かつ相当空気に触れさせたにもかかわらず蒸らしの段階でよく膨らんだ。
粉と粉の隙間が増えたからか、若干ではあるが抽出時に落ちる液体のスピードが速い。
香り弱し、後味の余韻も弱い。濃度計がないので細かい数値は不明だが①とあまり変わらない濃さに感じられる。
口当たりはクリーンで酸味は雑味がなく非常にクリア。苦味よりも酸味が主体となる味わいなので、これならば浅煎りのコーヒーでもよいのではなかろうか。

③微粉を少し取り除いたもの 抽出時間2分10秒
①と比べると香りやや弱し、後味の余韻もやや弱し。味のイメージは①と②の中間。スルスル飲めるクリーンな酸味。ここら辺は個人の好みの問題ですかね。僕は①の方が好きです。
では、以上3杯の味わいを左右した微粉とはなにか?今度は微粉だけで飲んでみましょう。

④微粉まる絞り100パーセント 短時間で少量抽出
濃い。知っていました。お湯で希釈した方が飲みやすい。
蒸らしの段階で粉が膨らまない。空気に触れさせていた時間が長すぎたのかもしれません。
試しにカットミルの目盛1番で挽いたもの‥‥微粉より一回り大きいぐらいの粗さの粉を抽出したのですが同じような結果に。焙煎から日が経ったことも関係していると思われます。
苦味の割合が多いが酸味もあり。①のように明確で個性豊かなフレーバーはないものの雑味やえぐみ、ざらつきなどネガティブな印象は感じられない。
口に含んだ質感は重たく後味に残る。この味わいが通常のコーヒーでいうコク、余韻の長さにつながると思われる。

極細挽きを短時間で抽出するエスプレッソからも分かるように、微粉でもお湯に接する時間が短いのであれば問題なさそうだ。

~まとめ~
・微粉をどの程度除去するかは個人の好みの問題。
・蒸らしで最も粉が膨らんだコーヒーは①だった。微粉がないと粉同士に隙間が生まれ炭酸ガスが抜けてしまうからだと考えられる。
・微粉は少量ならばコーヒーにコクと余韻をもたらす。
・ハンドドリップにおいて微粉サイズからフレーバーを引っ張り出すのは難しい(対してエスプレッソは高温+圧力で抽出する)。それ故、微粉の含有率が増えれば増えるほど抽出効率は悪くなる。
・微粉のクオリティは、豆と焙煎の良し悪しに直結する。
・長時間のハンドドリップは微粉にとって過抽出となる恐れがある。注ぎ足す湯量、粉の量、抽出時間のバランスを使用しているミルに合わせて調節する必要がある。
・今回はカット式のミル刃を使用。また微粉を取り除くために粉が空気に触れる機会も多かった。では、前回紹介した井上製作所やランブル グリッドミル、device STYLE グルメコーヒーミルなど「初めから微粉を減らすことを目的に作られた刃と内部構造」の場合はどのような味わいになるのだろうか。

(おまけ)新宿武蔵野館で映画「ギルティ」を観に行ってきました。
~あらすじ~ 武蔵野館の作品紹介より抜粋
緊急指令室に鳴り響く電話の音。
「緊急ダイヤルです」
「・・・・」
「もしもし?」
「・・・・ハーイ」
「酔っ払ってるのか?」
「・・・・・違うわ」
「誰かと一緒?」
「・・・・・・・・」
「イエスかノーで答えて。彼は電話の相手を知ってる?」
「・・・・・・・・・ノー」
「誘拐された?」
「・・・・・・・・・・・イエス」
緊急指令室のオペレーター、アスガー・ホルム。彼に与えられた事件解決の手段は《電話》だけ。車の発車音、女性の怯える声、犯人の息遣い、、、微かに聞こえる音だけを手がかりに、見えない事件を解決することはできるのか。犯人は、音の中に、潜んでいる

面白かったですよ。撮影セットは緊急司令室のみ。電話をかけるか受け取るかの会話劇だけで物語が展開していくのですが、これがまたスリリング。特に優れているのが環境音の魅せ方ですね。派手なBGMではなく環境音を用いて主人公の心情や電話向こうの様子を連想させたりするんですよ。シンプルな設定ながら非常に緊張感のある尖った作品でした。できることならヒューマントラストシネマ渋谷でソニーのオープンイヤーステレオヘッドセットとコラボした上映回に出席したかったです。

 ミニシアターでお馴染みの雑誌を切抜いた作品紹介。この他にも微弱な電気を発生させて周囲の状況を把握する川魚ジムナーカスを展示していました。武蔵野館は鑑賞前からワクワクさせてくれますね。他にはこんな展示も
 
イップ・マンシリーズで主人公に敗北した男が再び立ち上がる!「イップ・マン外伝 マスターZ」より武蔵野館スタッフ作の木人。人がいなかったら遊びたかったです。
あと武蔵野館で上映中のもので気になるのは「ちいさな独裁者」。脱走兵がナチス将校の軍服を偶然手に入れ、成りすまし成り上がる作品です。名は知られているが気が知れないB級専門映画会社アルバトロス配給なのも気になるところ。アルバトロスは「アメリ」や「善き人のためのソナタ」のような成功例がありますからね、期待大です。

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